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お試し小説版

2012.05.14 07:17|日記
小説版も読んでみたいってコメ頂いたので、一話だけちょっとこちらに載せてみようかと思います。
公開していたものなので新都社に載せることはできないため、こちらで。
4年前に書いたものであること、漫画の方とはちょこちょこ変わっているところがあること、を留意して頂ければ嬉しいです。
受験期に書いたものなので、そのときの精神状態を表しているといいますか、これでもか!と暗いものを詰め込んでいます。大人になるのが嫌だったこともあって、あえて自分を少し重ねて成長する物語を描きたかったのかなぁと今読むとそう思いますね…。
そしてそれを漫画にしようと思ったのが就活の最中…どうみても現実逃避です、まったく成長していない\(^o^)/

以前完結後頂いた小説版のレビューでは、「美しい世界が描かれているけれど、それは宝石のような美しさで、温かみを感じられないから感情移入がしにくい」ということでした。
これを漫画では改善したいのですけどね、しかしそれ以前の問題が多々あるような気も…むう。

ではお試し小説版、どんな感じだったのか読んでやるぜ!という方はどうぞ!↓
暁の影 一話
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僕は彼の全てが愛しかった

華奢な肩や細く長い指

少し長めの黒髪からちらと覗く白いうなじ

彼のそのはにかむ様な笑顔は

いつも僕をゾクリとさせる


「手を貸して」
彼は半ば無理矢理僕の手を取り、
手を広げて、指と指を確かめ合う様に絡ませる。
「どうしたの?」
触れられる指の熱さに些かたじろぎながら訊ねると、彼は少女の様にふふと笑った。
「手はね、その持ち主の人生を最も表すものだってどこかで聞いたんだ。
……こうやって僕らの手を重ねると、大きさも爪の形も……もちろん歩んできた人生も全然違うけど、
まるでずっと一緒に生きてきたみたいじゃない」

指は、いつの間にか神に祈りを捧げる形で重なりあっていた。
それはまさしく一人の人間としてそこにあるようで。
柔らかく熱を持った彼の手は、しっとりと僕の手と融け合っていた。


僕らはよく枕を並べて一緒に寝た。
大抵は僕の家で。たまに彼の家で。
彼はたまらなく悲しい事があると僕の家に突然転がりこんでくるのだ。
表面上は笑顔で誤魔化しているけど、いつも隠しきれずに見抜かれてしまう。
優しく話を促すと、布団の上でぽつりぽつりと話し出す。泣き出してしまう時もある。
その話は毎回僕に言わせると何でもないことだけれど、
ままあるように本人にとっては重大な事らしい。

僕は兄貴ぶってアドバイスしたり慰めたりする。
すると濡れた長い睫毛が瞬き、黒目がちの潤んだ瞳は僕を見上げ、頬を紅潮させて、
思いきりの笑顔で僕を魅了するのだ。

僕らは寝転がり、色々な事を話した。主に将来に関する事が多かった。
あの頃僕たちはまだ子供で、将来も虹色に輝いてみえた。


僕と彼が出会ったのは中学一年の春だ。
クラスが違う僕たちが会ったきっかけは文芸部だった。
人見知りの激しい僕に彼から近づいてきた。
僕は小説を書くのが好きで、彼は読むのが好きだった。
趣向が似ていたので、僕らは急速に仲良くなった。

でも彼が言うには、前から僕の事は知っていたんだそうだ。
「入学式の新入生代表スピーチをやっていたでしょう。
整った顔でしかも優等生だなんて目立つに決まっているよ」
そうやって軽快に笑う。
僕はそれに少し顔を赤くする。


彼に対する僕の気持ちは何て言うんだろう

友情と言うには後ろめたくて、愛情と呼ぶには透明すぎる

彼は言わば僕の少年期の象徴だった
眩しくて、楽しくて、清らかで、鮮やかな

僕は彼の隣で、できることならずっと手を握っていて欲しかった

しかし最後まで彼の気持ちはわからなかった


二年生になったある日、学校に着くと僕の教室に彼がいた。
クラスは今度も違っていたし、毎朝誰よりも早く教室に着くようにしていたので、
彼がいたことに驚いた。
どうしたの、と訊ねると彼は自分の足下をじっと見つめて黙ったままでいる。
僕が辛抱強く待っていると、彼は決意を固めたように真剣な眼差しで僕と向き合った。
そして口を開いた……と同時に、ガラリと教室にクラスメートが入ってきた。
彼は再び口を閉じ、そのまままっすぐ教室を出ていってしまった。
慌てて追いかけ彼の手を取ると、彼は手を引き寄せ僕の耳元でそっと囁いた。

「……学校終わったら来て。僕らの川に。大事な話があるんだ」
僕らの川とは二人でよく行った秘密の場所だった。
魚がいて、夏には蛍もいて、彼のお気に入りの場所だ。
わかった、と頷くと彼は満面な笑みで僕の手を握りしめ、背中を見せて走り去った。


帰りの学活が終わり、例の場所へ急ごうとすると先生が僕を呼び止めた。
来月の学校祭の原案がまだ集まっていないのに、生徒会長が休んでしまったんだそうだ。
僕は副会長だったので、代わりに集めてきてくれと頼まれた。
彼との約束が頭をよぎったが、すぐ終わるからと半ば強引に押し付けられてしまった。
この事を伝えようと彼の教室に行くと、たった今帰ってしまったと言う。
僕はため息をつき、まぁすぐ終わるという話だし早く終わらせてしまおう……と思っていたのだが、
原案を完成させてなかったクラスもあったりして時間がかかってしまった。

そのうちパラパラと雨が降ってきた。
そうだ、確か今日は雨が降るって予報だったのに。
僕は慌てて原案作成を促したり、回収しにいったりした。
それでもやっと半分回収し終わったと思ったら、もうあれから一時間も経っていた。

雨はさらに激しく窓を叩く。

……もう帰ってるんじゃないかな。
僕は外を見つめてそう思った。
こんなに時間が過ぎてしまったし、外は雨。
きっと帰ってしまっているだろう。これが終わったら彼の家に行って謝ろう。
そして彼のわがままを一つ聞いてあげるんだ。
そう考えたら罪悪感はあるものの、少し心に余裕ができた。
そしてさらに先生から他の仕事も押し付けられたりもして、7時を過ぎようとしていた。


……その間、彼はずっと待っていたのだ。
あの川で。
傘も差さずに、雨に打たれながら。
僕に何かを伝えるために……。


僕はそうと知らずに廊下を走りまわっていた。
職員室に行き、その話を聞くまでは。
同級生のお母さんが、増水し流れが速くなった川に彼らしき少年が滑り落ちた、
と先生に向かって叫んでいた。
警察に電話もしたけれど、もう流されてしまってどこにいるかもわからない、と。
先生も怒鳴るように対応していたが、もう僕の耳には何も聞こえなかった。

気がついたら僕は、
抱えていた原案の束を投げ捨て、
仕事も放りだし、
先生の止める声も聞かずに走り出していた。


遺体は発見されなかった。警察の懸命な捜索にも関わらず。
でも彼が生きているとは考えられなかった。
あの日の記録的な大雨は、川を増大させ、
まるで化け物のように3人の人間を飲み込み死に至らせたのだ。
彼には元々両親がいなくて、唯一の肉親である祖母に育てられていたのだが、
その祖母は事故直後に引っ越してしまった。
ここにいると辛い過去を忘れられないのだそうだ。

僕は逆に忘れまいとした。忘れてしまいそうになる度に僕は僕の体を傷つけた。
両親はそんな僕をまるで腫れ物にでも触るかのように接した。
親友の後を追って自殺するつもりなのだと思われたらしい。


僕は自殺をしようとしたことは一度もない。
死んでしまいたいという気持ちはあの事件以来消えた事はなかったが、
僕のこれは罰なのだ。
死という逃げ道さえ、僕には許されてはならない。


なぜなら、彼を殺したのは僕なのだから。


僕の人間らしい心は彼の姿と共に去ってしまった。

そして僕は中学、高校を卒業し、大学を出、教師になった。
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